JFN: 清水康之さんとの対談

2月に引き続き、全国28のFMラジオ局で放送するJFN『ON THE WAY ジャーナル』の対談パーソナリティを務めさせて頂いた。今回のゲストは、NPO法人 自殺対策支援センター ライフリンク代表の清水康之さん。清水さんは、NHKのディレクターとして活躍された後、ライフリンクを設立して自殺対策基本法制定に奔走、現在は内閣府の参与として自殺対策緊急戦略チームにも加わっている。今回は、そんな清水さんを半蔵門にお迎えして番組収録を行い、「自殺の実態と社会の変化、自殺対策への具体的な取組の理想と現実、自殺のない社会への提言」についてお話を伺わせて頂いた。

実は、清水さんとの対談は僕にとってタイムリーだった。というのは、去年、友人の紹介でグリーフサポートの活動を進めているLIVE ONの尾角光美さんに会い、以来、僕自身が初めて自死遺児やグリーフについて考える機会をもつようになっていた渦中だったのである。大切な人を亡くされた方々へのサポートが希薄になっている日本。そして、年間3万人という自殺者数を記録し続けている日本。清水さんにお話を伺いつつ、日本社会の構造的な欠陥を意識せずにはいられなかった。やはり人の生活様式や地域コミュニティのあり方に起因する根深い社会構造の歪というものが日本社会に存在し続けているのではないか…。

これは、僕が過去10年ほど現場で研究してきた教育分野についても同じである。仮に、コミュニティにおける教育主体を「学校、家庭、地域」と便宜的に大別すると、かつて家庭や地域が担ってきた教育機能の大部分を学校に委託するようになった結果、現在、学校がキャパオーバーで機能不全に陥るのは当然。重要なのはその主因で、僕は、そこに高度経済成長期の生活様式のシフトがあると思う。端的には、右肩上がりの成長を前提とした生活様式がもたらしたのは「都市化・核家族化・企業戦士化」。教育分野で言えば、この構造のため、家で親が子どもと接する時間が減り、地域の人と近所の子どもの接点が減った。

実は、清水さんが取り組まれている自殺対策の分野でも、問題解決の主因を辿っていくと同じ根っこに行き当たるのではないかと感じた。高度経済成長時代に形成した生活様式の存続。その前提条件が機能している間は良かったのだが、少なくとも今は違う。しかしながら、依然としてこの構造だけ残っているために、社会の様々な分野で機能不全が出るわけである。福祉、教育、環境…殆どの分野で表面化している問題の主因は、実は同じなのではないか。となると、これを打開するには人の生活様式レベルでのシフトが必要である。したがって、地域コミュニティのRe-モデリングが必要となる。自身の活動もその一助になればと願う。