2010-07-22

Schumacher College in UK

今月のハイライトは、以前から予定していた2週間のイギリス滞在。“人と自然の潜在性を引き出す”社会モデル創造を目指す構想の中で、「人」の部分については10年近くの試行で現場感に基づいたプランができているだが、「自然」の部分についてはプランのイメージはあっても現場感をもっと深める必要があると思っていた。そんな折、イギリスで“自然と調和した社会モデルづくり”を町ぐるみで取り組んでいる事例があると耳にして、是非この目で確かめてみたいと考えた。それが、サウスデボン州のトットネス(Totnes)。環境分野では言わずと知れた「トランジション運動の発祥の地」である。

トランジション運動とは、「ピークオイルと気候変動という危機を受け、市民の創意と工夫および地域の資源を最大限に活用しながら脱石油型社会へ移行していくための草の根運動」。自分なりに平たく言い換えると、「今の大量生産・大量消費の社会って、やっぱりマズいよね。みんなでアイデアを出し合って、必要な分だけ必要なものを生産して消費するようにしてかない?」ということである。そう考えれば、できるだけ自然の恵みを活かしつつ、食糧・エネルギー分野を中心にライフスタイルを変えていこうというのが活動の骨子になると容易に理解できる。


このムーブメントは、イギリス人のロブ・ホプキンスが、2005年に小さな町トットネスで呼びかけを行って活動を始めたのが発端である。活動は多岐にわたるので一言では説明できないが、自分の初期的な分析からざっくりまとめると、地産地消の農的活動をベースとして展開されている。その際、植物本来の力を引き出すパーマカルチャーという農的理論が広く使われる。したがって、「地域の人がパーマカルチャーで食糧を作る→地域で売る→地域の人が買う→地域の人が家で食べる/地域のレストランで料理して出す」というフローを頭に入れると理解しやすい。

トットネスでの活動開始から僅か3年足らずの間に、イギリス全土は勿論のこと、欧州各国・北南米・オセアニアそして日本と世界中に広がっているトランジション運動。この原点を見たいと思ったのが今回の出張の経緯だが、親友のチャッドの薦めで、トットネス近郊のダーティントン(Dartington)にあるシューマッハー・カレッジ(Schumacher College)に滞在することにした。このカレッジは持続可能社会の創造を掲げて1991年に設立された国際的な教育機関で、1~3週間程度のショートコースを年に10~20回開講している。トットネスの動きを概観するのに最適なコースを見つけ、参加することにした。


自分が参加したのは新設コースの「Gaia's Garden」。フィールドワーク+ディスカッション形式で、トットネスのトランジション運動を現場訪問ベースで概観しながら、実際に「食糧を作る→料理する→食べる→片付ける」のサイクルも体験してしまうというインテンシブなプログラムだった。少数精鋭のコース規模で、参加者は、イギリス人/オランダ人/インド人そして日本人が自分一人。農的分野に造詣が深い方々ばかりのグループにジョインすることになったが、ワークを進めるプロセスで自然に溶け込んでいった。

正直なところ、チャッドからの薦めに直感して勢いとノリで来たため、カレッジの詳細は現地に来てから理解したのだが、実におもしろい。自分が茅ヶ崎で過ごした松下政経塾の寮生活時代を思い出させるようなスタイルで、生徒・講師・スタッフ全員が敷地内の宿舎に寝泊りし、朝は6時から瞑想部屋で座禅を組み、掃除・洗濯・料理も輪番制で担当する。朝礼まであるのには驚いた。「机上で得た知識や理論を超えて、共同生活をしながら実際の行動や経験から学ぶことを重要視している」というカレッジの理念が見事に具現化されていて、まさにサステイナビリティにフォーカスした松下政経塾と言っても過言ではない。


毎日が濃密な学びに満ちていて、トランジション活動のワーキング・グループのリーダーを招聘しての講義・ディスカッション、農園訪問、堆肥づくり、コンテナガーデンづくり、マッシュルームづくりなど、具体的な体験を通じて「自然と調和しながら生活するというのは一体どういうことなのか?」について多角的に感じることができた。普段、実家で親がやっている畑仕事を、まさか自分がイギリスで多国籍メンバーと一緒にやることになるとは思ってもみなかったが…。ともかくも、これまで机上でイメージしていたものを実際に体感して、自分なりに“自然を活かす社会モデルづくり”の姿の輪郭が浮かび上がってきた。

そして、体感的に学びを進める中で気づいたことがある。トットネスにいると、『トランジション』『パーマカルチャー』『サステイナビリティ』といった単語が頻繁に飛び交っているのだが、「待てよ…地域の中で必要な分だけ必要なものを生産して消費する…自然を敬って共生する…これって、我が国・日本がかつて生活の中に普通に取り入れていたことじゃないか!」と思い始めた。実際、トランジション運動を知れば知るほど、自分から見れば非常に日本の古き良き村社会的。もしくは、それをアップグレードした姿のように感じた。なるほど灯台下暗し。ある意味で逆輸入。これが一番の学びとなった。