2011-12-17

道のカフェ@陸前高田:新たなる展望


3.11から9ヶ月が経ち、気がつけば季節は冬。初夏に立ち上げた復興支援プロジェクト「道のカフェ」は、寒い冬も被災地のみなさんと一緒に復興への道を歩みたいとの想いから、夏・秋に続いて冬の開催も実現するに至った。「道のカフェ」は、被災地にオープンスペースのカフェ空間を創出し、地域の皆様がコーヒーを飲みながら対話をする場を生み出すことで、地域コミュニティの再構築を支援する取組。松下政経塾の地域ネットワークでフィールドを設計し、スターバックスがカフェ空間を生み出し、キヤノンの写真技術で被災地の皆様の姿を全国に発信する連携プレー。6月に有志数名でブレストした夕食から帰宅後、自然と自分の頭の中に浮かんできたイメージから「道のカフェ」と名付け、そのまま明け方までかけて一気にプロジェクト企画書を仕上げた。縁が縁を呼んで垂直立ち上がりの実現に漕ぎ着け、以来、自分は全体プロジェクト設計・運営を共同で務めながら現在に至る。



この「道のカフェ」は、単なる一過性のイベントではなく、カフェの開催前と開催後のプロセスを伴う中長期の取組であることに大きな特徴がある。これは、地域のみなさんとプロジェクトのスタッフが恊働で創り上げるカフェという設計による。開催に当たっては、地域のみなさんが仮設住宅を一軒ずつ回って声かけしながら住宅内の状況を把握するとともに、プロジェクトのスタッフと綿密に連絡を取り合うなかで地域外との絆を深める。カフェ開催当日には一緒にお店を創り出し、恊働の成功体験によって一層お互いの絆が深められる。カフェ開催後には、足を運んでくれた方々に御礼を伝えて回るなかで新たな会話が生まれ、地域のみなさんと参加スタッフの間では自然発生的に個別の対話が生まれていく。こうして人と人とのつながりが生み出されていく場こそ、今後の復興まちづくりを切り拓く重要なプラットフォームになるのではないかと自分は強く思っている。



一方、プロジェクト企画運営側の我々にとっての課題は、持続可能なプロジェクトモデルへのシフトであった。というのも、夏と秋の開催では、スターバックスさんのご厚意で移動店舗型車輌のスターバックス号を稼働して頂き、全国各地からエース級のパートナーのみなさんに毎回20名近く参集頂いて実現していた。これは一つのスタイルとして大いに意義深いのだが、同時にコストも大きい。そこで、今回の冬開催に当たってスターバックスさんが新たにオペレーション設計して下さったのは、スターバックス号を使わずに簡易器材だけでカフェ空間を作るという、6人体制のミニチュア型「道のカフェ」だった。地域のみなさんにもオペレーションに深くコミットして頂く形となり、仮設住宅にお住まいのお母さん・お婆さん・お子さんまでもが大活躍。陸前高田市の米崎小学校&中学校の仮設住宅敷地内にて、見事にミニチュア型「道のカフェ」が実現された。



実際、現場では非常に面白い展開となった。最初、設営直後にプロジェクトスタッフから地域スタッフのみなさんにオペレーションを説明すると、横文字の並ぶ単語のオンパレードにお婆さん方は「ちんぷんかんぷん」な表情を浮かべていた。そこで方針転換。オーダーを受けるドリンクは3種類のみで、オペレーション上の記号も「A, B, C」。説明は簡単に切り上げて、とにかくリハーサルで実践練習。注文をとる人、コーヒーをいれる人、ミルクを作る人… それぞれに地域スタッフのみなさんに入ってもらい、リハをしてみて実際にできると歓喜の声があがる。お店をオープンして暫くは随所で炎上していたが、それもご愛嬌。しかし、30分、1時間と経つにつれて地域スタッフのみなさんは瞬く間に要領をつかみ、お互いに世間話もしながらの余裕ぶり。スタッフ内でも笑顔が溢れ、コーヒーを飲みに来た地域の方々も店舗の回りで話が弾んでいた。現場でプロジェクトを検証していた自分は「これだ!」と確信した。



米崎小学校&中学校と2箇所の仮設住宅敷地内で開催したミニチュア型「道のカフェ」を終えて地域スタッフのみなさんと話していると、様々な率直な声を伝えてくれた。「支援を受けるだけでは気がひける時期にさしかかっているから、こんなふうに自分たちも一緒に参加して作るのはすごくイイ」「仮設住宅にはいろんな人が混ざって住んでいるので、話をするのにいいきっかけになる」「家の中に籠ってしまっている人もいるから、こういう機会があると声かけで回りやすい」などなど。何とも言えない温かい気もちが内側から沸き起こる。現在、被災地の各自治体では政治・行政による復興計画の具体化フェーズに入っているが、地域のみなさんの生活現場を知るにつけ、とても政治・行政の動きを待っていられない状況がよく分かる。だからこそ、個人的には地域コミュニティが牽引するまちづくりの可能性を引き出すご支援をしたい。「道のカフェ」には、新たな地域づくりに至る道があるのかもしれない。